ラー文書第二巻では、私たちの内なるエネルギーセンターであるチャクラの働き、他者とのエネルギー交換の法則、人生経験を成長の糧とする「触媒」の概念、そして私たちを導く高次自己(ハイアーセルフ)の存在など、自己理解を深めるための重要な視点が示されました。
第三巻では、さらに意識の深層へと探求を進め、私たちの思考や経験の根底にある普遍的な設計図、「元型的思考(アーキタイプ・マインド)」に光を当てていきます。
ラーは、タロットの大アルカナが、単なる占いではなく、意識が進化していくプロセスを段階的に示す「内なる宇宙の地図」であると語ります。
この前編では、その地図を読み解き、特に私たちの「心(マインド)」と「身体(ボディ)」が経験する学びのサイクルを象徴する元型(アーキタイプ)を探求していきます。
この「内なる地図」を理解することは、自分自身の現在地を知り、人生で起こる出来事の意味を深く理解し、意識的な変容を遂げるための、強力な羅針盤となります。
思考の元型(Archetypes of Mind)とは:意識の設計図
ラーは繰り返し、タロットの本来の目的が「意識進化のプロセスの象徴体系」であり、自己の内面を探求し理解するためのツールであると強調します。
古代エジプトでラー自身が伝えた教えが元になっており、それぞれのカードが意識の特定の側面や発達段階、学びのテーマを表しています。
元型の概念:普遍的な意識パターン
ラーがタロットを通して示す「元型(アーキタイプ)」とは、心理学者カール・ユングが提唱した概念とも通じますが、より宇宙的なスケールを持っています。
それは、個人の意識だけでなく、集合意識、さらには宇宙全体の意識の根底に存在する、普遍的で基本的なパターンやエネルギーのことです。
魂が「一なるもの」から個へと分かれ、様々な経験を通して再び統合へと向かう旅路において、必ず通過する共通のテーマや課題、エネルギー状態が元型として象徴されているのです。

心・体・霊の三つのサイクル
ラーは、大アルカナ22枚の元型(0/22を含む)を、大きく三つのサイクルに分類して解説します。
- 心のサイクル(Cycle of the Mind):意識的な精神(マインド)の発達と働き、外界との関わり方を学ぶ段階。(元型1~7)
- 体のサイクル(Cycle of the Body):物質的な身体を通して経験する体験、試練、変容、そして心と霊の統合を学ぶ段階。(元型8~14)
- 霊のサイクル(Cycle of the Spirit):個の限界を超え、より高次の意識、宇宙的な視点、そして「一なるもの」への回帰を目指す段階。(元型15~21 + 0/22)
『0/22』というのは、「15番から21番までの元型に加えて、このサイクル全体の始まりであり終わりでもある0番(または22番)の『愚者』の元型も含む」 という意味合いになります。
この前編では、「心」と「体」のサイクルに属する元型を詳しく見ていきます。
「心」のサイクル(元型1-7):意識的マインドの働きと成長

最初のサイクルは、私たちの意識的な「心(マインド)」がどのように世界を認識し、働きかけ、成長していくかを示しています。
元型1 魔術師(The Magician):意識と意志の力
「魔術師」は、意識的な精神(マインド)そのものを象徴します。
それは、無限の可能性(知的無限)の中から特定の現実を顕現させる力、つまり「意志」の力を持ちます。
私たちが自らの思考と意志を用いて、現実を創造していくプロセスの始まりを示唆します。
元型2 女教皇(The High Priestess):内なる叡智への扉
「女教皇」は、意識的な精神(魔術師)の対となる、潜在意識の広大な領域を象徴します。直観、秘められた知識、内なる叡智へのアクセスポイントです。この元型は、私たちが意識できない領域からの影響や導きを受け取る能力を表しています。
元型3 女帝(The Empress):創造性と経験の触媒
「女帝」は、潜在意識よりもさらに深い「無意識」の領域を象徴し、生命の創造性、豊穣さ、そしてあらゆる経験を生み出す母体です。
人生における出来事(触媒)は、この創造的な無意識から生み出され、私たちに学びの機会を与えます。
元型4 皇帝(The Emperor):構造化と理性
「皇帝」は、「女帝」が生み出した経験や触媒を、意識的な精神(魔術師)が理解し、秩序立て、構造化しようとする働きを表します。
理性、論理、社会的なルールや権威、物質世界における安定性を象徴します。
元型5 教皇(The Hierophant):信念体系と学び
「教皇」は、私たちが外界から学び、取り入れる信念体系や知識、伝統などを象徴します。
顕在意識が、社会や他者からどのように影響を受け、何を「真実」として受け入れるか、というプロセスに関わります。
元型6 恋人(The Lovers):関係性と選択
「恋人」は、顕在意識(教皇)と潜在意識(女教皇)の間のコミュニケーション、あるいは自己と他者との関係性を象徴します。
価値観に基づく選択、調和、そして二元性の統合といったテーマを表します。
元型7 戦車(The Chariot):意志による前進
「戦車」は、心のサイクルの集大成です。
確立された自己(マインド)が、強い意志の力をもって、身体や感情、外界の状況などを制御し、目標に向かって前進していく様を象徴します。しかし、ここでの勝利はまだ完全な統合ではなく、更なるバランスが求められます。
「体」のサイクル(元型8-14):物質世界での試練と変容

第二のサイクルは、私たちが物質的な身体を通して経験する試練や変容、そして心と霊の統合に向けた学びを示しています。
元型8 力(Strength / Adjustment):内なる調和
ラーはこのカードを「調整(Adjustment)」と呼ぶこともあります。
「力」は、内なる情熱や本能(獣性)を、理性や意志(マインド)が力で抑えつけるのではなく、理解と愛をもって受け入れ、調和させることの重要性を示します。
真の強さは内なるバランスから生まれます。
元型9 隠者(The Hermit):内省と探求
「隠者」は、外界から一時的に離れ、自己の内面深くを探求し、内なる叡智の光(ランプ)を見出すプロセスを象徴します。
自己分析、瞑想、賢者からの導きといったテーマを表します。
元型10 運命の輪(Wheel of Fortune):サイクルとカルマ
「運命の輪」は、人生における変化のサイクル、浮き沈み、そしてカルマの法則を象徴します。
出来事は偶然ではなく、過去の行動の結果として巡ってくるという宇宙の法則への気づきを促します。
元型11 正義(Justice / Equilibrium):バランスと公平性
ラーはこのカードを「均衡(Equilibrium)」と呼びます。
「正義」は、宇宙のバランス、原因と結果の法則、そして公平性を象徴します。自分の行動の結果を受け入れ、内外のバランスを取ることの重要性を示します。
元型12 吊るされた男(The Hanged Man):視点の転換と受容
「吊るされた男」は、従来の視点を逆転させ、物事を全く新しい角度から見る必要性を示します。
自己犠牲、受容、流れに身を任せること、そして内なる平和を見出すプロセスを象徴します。
元型13 死神(Death):変容と解放
「死神」は、物理的な死だけでなく、古い状況、古い自己、古い信念体系の終わりと、それに伴う変容、そして新しい始まりを象徴します。
執着を手放し、変化を受け入れることによる解放のプロセスです。
元型14 節制(Temperance):統合と錬金術
「節制」は、体のサイクルの集大成です。対立する要素(意識と無意識、物質と精神など)を混ぜ合わせ、調和させ、統合していくプロセスを象徴します。
バランス、中庸、そして内なる錬金術による変容を表します。
ラーが元型として解説するタロットの構造は、現在世界で最も広く使われている「ライダー・ウェイト・スミス版(Rider-Waite-Smith Tarot)」に基づいていると考えられています。(この系統のデッキは、大アルカナだけでなく小アルカナ(数字のカード)にも具体的な人物や場面が描かれているため、カードの意味を直感的に掴みやすく、初心者の方には特におすすめです。
また、解説書や関連書籍が非常に多いため、学習しやすいという大きなメリットがあります。
元型的思考と触媒の関係
人生の出来事(触媒)はどの元型を活性化させるか?
私たちが人生で経験する出来事、つまり「触媒」は、多くの場合、特定の元型エネルギーを活性化させ、そのテーマに関する学びを促します。
例えば、新しいプロジェクトを始める時は「魔術師」のエネルギーが、人間関係で悩むときは「恋人」や「力」のテーマが、大きな変化に直面したときは「死神」や「塔」の元型が活性化しているかもしれません。
元型を通して触媒の意味を理解する
自分が今、どの元型のエネルギーの影響下にあるか、どのテーマに取り組んでいるかに気づくことは、人生の出来事(触媒)の意味を深く理解する助けとなります。
なぜこの出来事が起こっているのか?
この経験を通して何を学ぶことが求められているのか?
元型という「内なる地図」は、これらの問いに対する答えを見つけるためのヒントを与えてくれます。
もし特定のパターン(例えば、同じような人間関係の問題や失敗)を繰り返しているなら、それは特定の元型の課題がまだ完了しておらず、バランスが取れていないことを示唆しているのかもしれません。
まとめ:内なる地図で現在地を知る
この前編では、ラー文書第三巻の中心テーマである「元型的思考(アーキタイプ・マインド)」の概念と、その「内なる地図」としてのタロット大アルカナ、特に「心」と「体」のサイクルに属する元型1番から14番までをまとめました。
魔術師から節制に至るこれらの元型は、私たちが意識を発達させ、物質世界で経験を積み、内面的な変容を遂げていく普遍的なプロセスを映し出しています。
この「内なる地図」を理解し、自分自身の思考、感情、行動、そして人生で起こる出来事(触媒)と照らし合わせることで、私たちは自己認識を深め、現在直面している課題や学びのテーマを明確にすることができます。
後編では、さらに霊的な次元へと進み、「霊」のサイクルを示す元型(15番~21番、そして愚者)を探求します。
そして、夢や癒しといった具体的なツールを通して、この「内なる地図」をどのように統合し、バランスを取り、次なる進化の段階へと進んでいくのかを見ていきます。

ラーが元型として解説するタロットの構造は、現在世界で最も広く使われている「ライダー・ウェイト・スミス版(Rider-Waite-Smith Tarot)」に基づいていると考えられています。(この系統のデッキは、大アルカナだけでなく小アルカナ(数字のカード)にも具体的な人物や場面が描かれているため、カードの意味を直感的に掴みやすく、初心者の方には特におすすめです。
また、解説書や関連書籍が非常に多いため、学習しやすいという大きなメリットがあります。