前編では、ウィジャ盤を介した偶然の出会いから、高次元存在「セス」との対話が始まるまでの黎明期を辿りました。
謎めいた存在「フランク・ワッツ」から、より広大で普遍的な意識である「エネルギー人格エッセンス」としてのセスへ。
そして、「魂のブループリント」や「人格の断片」といった、私たちの存在の多次元的な側面が示唆されました。
この中編で扱うセッション15から28は、セス哲学がその核心部分を本格的に明かし始める、極めて重要な期間です。
私たちが疑いなく「現実」と信じているこの物理的世界は、実は巧みに作られた「カモフラージュ」に過ぎないとしたら?
そして、そのカモフラージュの背後にある「本当の世界(実相)」を認識するための感覚が、私たちの中に眠っているとしたら?
常識という名の眠りから覚め、世界の「本当の姿」を垣間見る旅へ、さらに深く分け入っていきます。

本ブログの内容をラジオ形式の音声化したものです。
文章を読む時間がない時や、リラックスしながら内容を深く味わいたい時などにご活用いただければ幸いです。

物理的世界は「カモフラージュ」に過ぎない(SESSION 16 – 21)
セッションが進むにつれ、セスはジェーンとロブ、そして私たち読者に対して、衝撃的な概念を提示します。
それは、私たちが五感で捉え、物理法則に従って動いていると信じているこの世界全体が、実は「カモフラージュ」であるという考え方です。
「観念の構築物」としての世界
セスによれば、私たちの世界は「観念の構築物(Idea Construction)」です。
これは、私たちの思考、信念、感情、期待といった内なる「観念」が、エネルギーを特定の形に凝縮させ、物質的な現実として現れたものである、ということを意味します。
目の前にあるテーブルが硬いのも、リンゴが赤いのも、重力によって物が下に落ちるのも、すべては「そうである」という集合的な観念(信念)が創り出した、非常に安定した幻影、つまり「カモフラージュ」なのです。
この考え方は、現代物理学、特に量子力学の発見と奇妙なほど共鳴します。
量子力学では、素粒子は観測されるまでは確定した状態を持たず、「確率の波」として存在し、観測者の意識が介在することによって初めて一つの状態に収束する(波束の収縮)ことが示唆されています。
これはまさに、意識(観念)が物理現象に影響を与えるというセスの主張を裏付けるかのようです。
セスはこのプロセスを、「メンタル・エンザイム(精神的な酵素)」という独自の言葉で説明します。
酵素が特定の化学反応を促進するように、私たちの観念という「メンタル・エンザイム」が、宇宙に遍満する根源的なエネルギー(セスはこれを「バイタリティ」と呼びます)に作用し、それを原子や分子といった物理的なカモフラージュ・パターンへと変換するのです。
私たちが呼吸をしたり、心臓を動かしたりするのに、いちいちその仕組みを意識する必要がないのと同じように、この現実創造のプロセスも、私たちの意識のより深いレベルで、絶えず自動的に行われています。
つまり、私たちは眠っている間でさえ、自らの信念に基づいて現実を創造し続けているのです。
なぜ「カモフラージュ」が必要なのか?
では、なぜ私たちはこのような手の込んだカモフラージュの世界を創り出したのでしょうか。
セスはその理由を、魂の「学び」と「経験」のためだと語ります。
魂(エンティティ)は、本来、時間や空間の制約を受けない、純粋な意識エネルギーの存在です。
しかし、その状態のままでは経験できない特定の学びがあります。
例えば、「抵抗」や「限界」、「成長」といった感覚です。
時間という制約の中で、物質という抵抗のある対象を扱い、目標に向かって努力し、達成するという経験は、この物理次元というカモフラージュの世界だからこそ可能な、貴重な学びなのです。
この世界は、魂が自らの創造性を探求し、様々な感情を味わい、成長するための、壮大でリアルなシミュレーション・ゲームの舞台のようなものだと言えるかもしれません。
私たちがこの「カモフラージュ」の仕組みを理解することは、自らを無力な犠牲者と見なすのをやめ、人生の舵を自らの手に取り戻すための第一歩となるのです。
「内なる感覚」とは何か?(SESSION 20 – 24)
私たちがカモフラージュの世界に完全に没入し、道に迷ってしまわないように、本来の自分(エンティティ)と繋がるためのナビゲーション・システムが備わっています。
それが「内なる感覚(Inner Senses)」です。
五感を超えた知覚
セスは、私たちが普段頼りにしている視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚といった五感を「外なる感覚(Outer Senses)」と呼びます。
これらの感覚は、あくまで「カモフラージュの世界」を認識するために特化した、限定的な知覚ツールです。
テーブルの硬さや色を認識することはできますが、そのテーブルを構成している原子の振動や、その背後にある意識のエネルギーを感じ取ることはできません。
それに対して、「内なる感覚」は、カモフラージュの層を突き抜け、その背後にある「実相(リアリティ)」、つまり物事の本質的なエネルギーや情報を直接知覚する能力です。
私たちが「直感」「インスピレーション」「虫の知らせ」などと呼んでいるものは、この内なる感覚が働いたほんの一例に過ぎません。
初期セッションにおいて、セスはこれらの内なる感覚の存在を明確に示し、ジェーンとロブがそれを体験し始めるプロセスを導いていきます。
テレパシー、予知、ヴィジョンが生まれる仕組み

内なる感覚が活性化すると、私たちは時間や空間の制約を超えた知覚を体験し始めます。
- テレパシー:
他者の思考や感情を、言葉を介さずに直接感じ取る能力。
セスによれば、これは特殊能力ではなく、すべてのコミュニケーションの根底に流れているものです。
言葉は、内なる感覚で受け取った情報を補強するための、二次的なツールに過ぎないのです。 - 予知(プレコグニション):
未来に起こる出来事を事前に察知する能力。
これは、直線的な時間という概念がカモフラージュであるために可能となります。
内なる感覚は、時間の壁を超えて、確率の高い未来の出来事のエネルギーを捉えることができるのです。 - クレアボヤンス(透視)とヴィジョン:
物理的な視覚に頼らずに、遠く離れた場所の光景や、通常は見えないエネルギー体(オーラなど)を見る能力。
ジェーンとロブは、セッション中にこうしたヴィジョンを頻繁に体験し始め、それは彼らにとって、セスの語る世界の信憑性を裏付ける重要な証拠となりました。
これらの能力は、一部の超能力者に与えられた特別な才能ではありません。
セスによれば、それはすべての人間が生まれながらに持っているとのこと。
しかし現代社会では多くの人が眠ってしまっている潜在能力なのです。
そして、その能力を再び目覚めさせる鍵は、内なる自己を信頼し、外なる感覚(特に「こうあるべきだ」と判断する理性や論理)の絶え間ないおしゃべりを少しだけ静かにさせ、その支配を緩めることにあります。
それは、思考を停止することではなく、思考の源泉である、より深い知性に心を開くことなのです。
魂(エンティティ)と意識の多層構造(SESSION 24 – 28)
「内なる感覚」の存在を理解するためには、私たちの意識そのものが、単純な一つの層ではないことを知る必要があります。
セスは、私たちの意識が玉ねぎのように多層的な構造になっていることを明らかにします。
自我、潜在意識、そして「内なる自己」

私たちが普段「自分」だと思っている意識は、セスによれば「自我(エゴ)」と呼ばれる、意識全体のほんの表層部分に過ぎません。
それはまるで、広大な海の表面に浮かぶ氷山の一角のようなものです。その水面下には、私たちの存在を支える、遥かに巨大でパワフルな領域が広がっているのです。
- 自我(エゴ):
意識の最前線に立つ司令官であり、カモフラージュの世界における私たちのアイデンティティの中心です。
外なる感覚と連携し、物理世界で生き残り、社会的な活動を営むためのナビゲーター役を果たします。
論理的に考え、計画を立て、言語を操り、行動を実行します。
自我は、私たちがこの物質次元で一貫した自己を保ち、経験を整理するために不可欠な機能です。
しかし、その知覚はカモフラージュの世界に限定されており、その背後にある実相を直接見ることはできません。
自我はしばしば、自分が意識のすべてであると錯覚し、理解できない内なる感覚からの情報を「非合理的」として退けようとする傾向があります。 - 潜在意識:
自我という氷山のすぐ水面下にある、広大でダイナミックな領域です。
ここには、今生のすべての経験と記憶が、忘れ去られたものでさえも貯蔵されています。
しかし、それは単なる個人的な記録保管庫ではありません。
ユングが提唱したように、ここには人類共通の元型(アーキタイプ)や神話的イメージを含む「集合的無意識」の層があり、さらには数々の過去生から持ち越された才能、傾向、未解決の感情なども含まれています。
潜在意識は、内なる自己からの純粋なエネルギー情報と、自我が理解できるカモフラージュの世界の情報とを繋ぐ、巨大な翻訳ステーションのような役割を果たします。
内なる感覚からの情報が、自我に届く前の中継地点であり、夢や象徴、感情の波といった独自の言語で、私たちにメッセージを送り続けています。 - 内なる自己(Inner Self):
潜在意識のさらに奥深く、私たちの存在のまさに核となる部分に位置するのが、「内なる自己」です。
これは、私たちの魂(エンティティ)が、この物質次元での活動のために分化した、最もパワフルで賢明な側面です。
エンティティと直接繋がっており、すべての内なる感覚を統括する司令塔です。
私たちは意識しませんが、呼吸や心臓の鼓動、細胞分裂といった、生命を維持するための驚くほど複雑なプロセスを完璧に管理しています。
また、夜ごと私たちを夢の世界へと誘い、そこで魂のコミュニケーションや問題解決、エネルギーの再充電を行っています。
そして何よりも重要なのが、私たちの根源的な信念や観念を物理現実に変換する「現実創造」のプロセスを、絶え間なく担っているという点です。
内なる自己こそが、私たちの人生という舞台の真の演出家であり、創造主でもあるのです。
私たちが内なる感覚からのメッセージを受け取る時、それは「内なる自己」が実相から直接受け取った純粋な情報を、潜在意識が翻訳し、最終的に「直感」や「ひらめき」、「シンクロニシティ」といった、自我にも認識可能な形で届けてくれているのです。
この意識の三層構造を理解し、自我が内なる自己のガイダンスに心を開くとき、私たちは初めて自らの全体性(ホールネス)を取り戻し、真の力を発揮し始めることができるのです。
受け取る時、それは「内なる自己」から潜在意識を経由し、直感やひらめきといった形で自我に届けられるのです。
夢の世界の重要性

セスは、夢の世界がこの意識の多層構造を理解する上で、極めて重要な役割を果たすと強調します。
夢を見ている間、自我の働きは最小限になり、私たちは「内なる自己」が創造する、より自由で流動的なリアリティを体験します。
夢の世界は、単なる脳の残余活動や無意味な幻想ではありません。
それは、内なる自己がカモフラージュの制約から解放され、自由に創造活動を行う「もう一つの現実」なのです。
この夢の世界では、私たちの魂の成長にとって不可欠な、以下のような重要な活動が絶えず行われています。
- 問題解決と創造:
覚醒時の自我は、しばしば論理や常識、過去の経験といった枠組みに囚われ、行き詰まってしまいます。
しかし夢の中では、内なる自己がこれらの制約を超えた視点から問題に取り組みます。
一見無関係に見える要素を自由に組み合わせ、象徴的な物語を紡ぎだすことで、私たちに新しい解決策や画期的なアイデアを提示してくれるのです。
多くの科学者や芸術家が、夢から決定的なインスピレーションを得たという逸話は、この内なる自己の創造的な働きによるものです。 - 魂のコミュニケーションと学び:
夢の世界は、意識が出会うための共通の場でもあります。
物理的な身体という境界が薄れるため、私たちはそこで、亡くなった愛する人々や、精神的なガイド、さらには自分自身の他の人格(過去生や未来生の自分、あるいは並行世界に存在する自分)と、活発にコミュニケーションをとることがあります。
これらは単なる感傷的な再会ではなく、魂のレベルでの情報交換や学び、癒しのプロセスなのです。 - エネルギーの再充電と癒し:
私たちが物理世界で活動するためには、絶えず根源的なエネルギー(バイタリティ)を消費しています。
夢を見ている時間は、私たちの意識がその源泉であるエンティティと再び深く繋がり、消耗したエネルギーを再充電し、心身の不調和を癒すための、極めて重要なメンテナンスの時間です。
質の良い睡眠の後に心身がリフレッシュされるのは、このエネルギー的な再結合が行われるためです。 - 未来の予行演習:
内なる自己は、夢の世界を、これから起こりうる「確率の高い未来」のシミュレーションの場として利用することがあります。
様々な可能性を予行演習し、感情的な準備を整えたり、より良い選択をするためのヒントを与えたりするのです。
予知夢と呼ばれるものは、この働きが特に明確に現れたものと言えるでしょう。
このように、夢は私たちの意識の半分を占める、豊かで意味のある活動領域なのです。
夢日記をつけるなどして、自分の夢に意識的に注意を向けることは、自我と「内なる自己」との間に橋を架ける行為に他なりません。
夢からのメッセージを尊重し、理解しようと努めることで、私たちは内なる自己との信頼関係を築き、その通路を広げていくことができます。
それは、内なる感覚を目覚めさせ、自分自身の全体性を取り戻すための、最も安全で効果的な訓練の一つなのです。
まとめ:私たちは「現実の共同創造主」である
セスとの対話が進むにつれて、世界の姿は一変しました。
硬い物質でできた客観的な世界だと思っていたものは、実は私たちの内なる「観念」が映し出した、柔軟で創造的なエネルギーの場でした。
そして、その世界の本当の姿を知覚するための「内なる感覚」が、私たちの中には眠っているのです。
中編で解説した「観念による現実創造」「内なる感覚」「意識の多層構造」という3つの柱を理解することは、私たちを単なる現実の体験者から、自らの意志で望む現実を創り出す「現実の共同創造主」へと意識変容させる、力強い鍵となります。
しかし、セスの語る宇宙は、さらに広大で深遠です。
後編では、このカモフラージュの世界を支える、さらに根源的なルールに迫ります。
「時間」とは一体何なのか?
セスが語る「第五次元」や多次元宇宙とは、どのような世界なのか?
私たちの想像を遥かに超えた、壮大な宇宙の真実が、いよいよそのベールを脱ぎ始めます。

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