「なぜ、私はこの親の元に生まれたのだろう?」
「なぜ、生まれつきこのような才能や身体的特徴を持っているのだろう?」
「人生で繰り返されるこの困難には、一体どんな意味があるのだろう?」
私たちは人生の様々な局面で、こうした根源的な問いに突き当たることがあります。
多くの場合、その答えは「運命」や「偶然」、あるいは「遺伝」という言葉で片付けられてしまいがちです。
しかし、高次の存在セスは、それらが決して偶然の産物ではないと断言します。
『セスブック 夢、進化、そして価値実現 第2巻』は、まさに私たちの存在の核心に迫る一冊です。
前編である本記事では、特に「遺伝子と輪廻の法則」に焦点を当てます。
セスによれば、私たちの遺伝的構造でさえも、魂がその人生で何を学び、何を成し遂げたいかに基づいて、生まれる前に自ら選択した「青写真」なのです。
あなたが今、体験している人生は、あなたが壮大な目的を持って自らデザインした物語だとしたら?
この記事を読み進めることで、あなたは自らの人生を全く新しい視点から見つめ直し、あらゆる経験が魂の成長にとって必然であったことを深く理解するはずです。

本記事のラジオ形式の音声版をご用意いたしました。
文章を読む時間がない時や、リラックスしながら内容を深く味わいたい時などにご活用いただければ幸いです。
遺伝子は運命ではない – 魂が選ぶ青写真
私たちの人生の物語は、どこから始まるのでしょうか?
多くの人は、両親から受け継いだ「遺伝子」という、変更不可能な脚本から始まると考えます。
身体的な特徴、才能、病気のリスクに至るまで、遺伝という言葉はしばしば、私たちの可能性を限定する「運命」の同義語として語られてきました。
しかし、セスはこの常識という名の舞台設定そのものを、根底から覆す壮大な視点を提示します。
セスの視点:あなたの身体は魂が選んだ「船」である

セスによれば、私たちの遺伝的構造は、決して固定された運命のプログラムではありません。
それは、魂がこの人生という壮大な航海で経験したい挑戦と可能性に合わせて、自ら「選択」したオーダーメイドの「船」なのです。
「ある人々は、卓越した船、最も洗練された機械、豪華なソファと宴会を備えた船を強く求めるでしょう。…また他の人々は、より多くの興奮を求め、より頑丈な船を、そして代わりにそれほど壮大ではないが、より速く進む船を望むでしょう。…それぞれのアナロジーは単純かもしれませんが、各人は自分自身の動機と目的を心に抱いて、身体という存在の器を選ぶのです」
この比喩は、私たちの存在に対する見方を180度転換させます。
ある魂は、芸術的な才能という名の美しい帆を持つ船を選ぶかもしれません。
また別の魂は、知的な探求という名の精密な羅針盤を備えた船を選ぶでしょう。
そして、私たちが一般的に「ハンディキャップ」と見なす特徴でさえ、特定の学び、例えば「共感」や「内なる強さ」といった宝物を見つけるために、魂が意図的に選んだ特殊な船の設計図の一部なのかもしれません。
【科学との共鳴】エピジェネティクスが示す「意識」の力
「思考が遺伝子に影響を与える」というセスの主張は、一見すると非科学的に聞こえるかもしれません。
しかし、驚くべきことに、現代科学の最先端分野であるエピジェネティクスは、セスのこの考え方に強力な裏付けを与えつつあります。
エピジェネティクスとは、「遺伝子配列そのものは変わらないが、どの遺伝子が働くか(発現するか)は後天的な要因で変化する」という仕組みを研究する学問です。
私たちの食事、環境、ライフスタイル、そしてストレスや思考、感情といった内的な状態が、遺伝子のスイッチをオンにしたりオフにしたりする「監督」の役割を果たしていることが分かってきました。
これは、遺伝子をピアノの「鍵盤」に例えるなら、エピジェネティクスはどの鍵盤を、いつ、どんな強さで弾くかを決める「ピアニストの指」です。
鍵盤そのものは変わりませんが、演奏される音楽(私たちの身体や心の状態)は、ピアニストの意志(意識)によって無限に変化するのです。
セスが半世紀も前に語っていた「あなたの思考、感情、願望、意図…もまた、その(遺伝的)構造を修正し、ある潜在的な特性を現実化させ、他のものを最小化させる」という言葉は 、まさにこのエピジェネティクスの本質を捉えていると言えるでしょう。
【バシャールとの共通点】「観念」がDNAのスイッチを押す
この「意識が遺伝子に影響を与える」という視点は、同じく高次の存在であるバシャールの教えの根幹、**「観念(Belief System)が現実を創造する」**という法則とも深く響き合います。
バシャールによれば、私たちが心の最も深いレベルで「真実である」と信じていること、つまり「観念」が、私たちの思考、感情、行動、そして体験する現実のすべてを形作っています。
この観念こそが、エピジェネティクスの「ピアニスト」を導き、どの遺伝子のスイッチをオンにするかを指示する、根本的なプログラム言語なのです。
例えば、「人生は闘いだ」という観念を持っていれば、私たちの意識は生存競争に関連する遺伝子を活性化させ、ストレスホルモンを分泌しやすい身体の状態を創り出すかもしれません。
逆に、「世界は愛と豊かさに満ちている」という観念を持てば、心身のリラックスや修復を司る遺伝子が活性化されるでしょう。
セスもバシャールも、私たちの意識がいかに根源的な創造力を持っているかを、異なる言葉で、しかし同じ真実を指し示しているのです。
輪廻転生という壮大な学びのスケール

魂が自らの遺伝子さえも選ぶという壮大な視点は、必然的に「輪廻転生」という概念へと私たちを導きます。
一度きりの人生という枠組みの中では、この選択の自由と目的を完全に理解することは難しいからです。
カルマという誤解:罰ではなく「自由意志」による学びの舞台
「輪廻転生」と聞くと、多くの人は「カルマ」や「業」といった言葉を連想し、「前世の行いが、今世の幸不幸を決める」という、どこか運命論的で罰のようなイメージを持つかもしれません。
しかし、セスもバシャールも、この一般的なカルマの解釈を明確に否定します。
「それは罰と報酬から成る心理的な舞台ではありません」
「あなたは、あなた自身の特性を与えられた上で、あなたの人生の状況において自由意志を持っています」
バシャールも同様に、死後の世界は罰の場ではなく、関わった全ての人の視点から自らの人生を追体験し、深い理解と学びを得るためのプロセスであると語ります。
彼らの視点では、輪廻転生とは、魂が様々な役柄、環境、人間関係を体験することを通じて、愛や創造性、叡智といった側面を多角的に探求し、成長していくための、壮大で自由な学びのカリキュラムなのです。
【哲学との対話】ニーチェの「永劫回帰」と人生選択の覚悟
この「魂の選択」という考え方の深淵を覗き込むために、ドイツの哲学者ニーチェが提唱した**「永劫回帰(えいごうかいき)」**という思考実験が、一つの強力なレンズとなります。
ニーチェはこう問いかけます。
「もしある日、悪魔がやってきてこう告げたらどうだろう。『お前が今生きているこの人生、そしてこれまで生きてきたこの人生を、お前はもう一度、いや、数えきれないほど何度も繰り返さなければならない。そこには何一つ新しいものはなく、あらゆる苦痛、あらゆる快楽、あらゆる思考、あらゆる溜息が、寸分違わぬ順序で回帰してくるのだ』と。お前はこの悪魔に身を投げ出して歯ぎしりするか? それとも、『汝は神だ、これほど神々しい言葉を聞いたことがない!』と答えるか?」
これは、セスの言う「自由意志による人生の選択」が、どれほどの覚悟と愛に満ちたものであるかを、私たちに突きつけます。
もし、あなたの魂が、この困難や苦しみさえも含めて、この人生の全てを「もう一度、いや、何度でも!」と歓喜して選んだのだとしたら。
その視点に立った時、人生のあらゆる出来事は、呪いから祝福へとその姿を変えるのではないでしょうか。
「遺伝的な夢」とは何か? – 胎児期から始まる意識の形成
セスの探求は、さらに私たちの意識の最も神秘的な領域、「夢」へと向かいます。
セスにとって夢は、単なる脳の休息活動などではなく、現実を創造する根源的なプロセスそのものなのです。
意識は脳の産物ではない:セスの画期的な主張
西洋近代科学のパラダイムでは、「意識は脳という物質的な器官の働きによって生まれる」と考えられてきました。
しかし、セスはこの前提を完全に覆し、**「意識が肉体に先行する」**と主張します。
「思考のパターンが脳を活性化させるのであり、その逆ではないのです」
このセスの視点は、バシャールが語る意識の構造とも見事に一致します。
バシャールは、私たちの意識を、日常的な思考や分析を行う**「フィジカル・マインド(物理的な脳に根差した意識)」と、時間や空間を超えた高次の視点を持つ「ハイヤー・マインド(高次の自己)」**に分けて説明します。
セスの言う「意識」とは、この両方を含む、脳という物理的な器を遥かに超えた広大な存在です。
脳は、その広大な意識がこの物理次元で活動し、自己を表現するための、極めて重要な「インターフェース」あるいは「受信機」なのです。
胎児が見る夢:人類の叡智が流れ込む源泉

意識が肉体に先行するというセスの主張は、さらに驚くべき領域へと私たちを誘います。それが、胎児が見る**「遺伝的な夢」**です。
これは、遺伝子が単に身体の設計図という生物学的な情報を運ぶだけでなく、意識の形成に直接関与する、根源的な夢を誘発するトリガーの役割を持つという、非常に深遠な概念です。
「胎児は夢を見ます。その身体的な成長が子宮内で行われるように、その意識の形成もまた、遺伝的な夢によって拡張されるのです」
この「遺伝的な夢」は、私たちが生まれる前に、この物理次元を体験するための準備を行う、極めて重要なプロセスです。
それは、これから使うコンピュータにOS(オペレーティングシステム)をインストールする作業に似ているかもしれません。
夢という仮想空間の中で、私たちは「自己と他者」「内と外」「安全と危険」といった、人間として現実を認識するための基本的な枠組みやプログラムを、魂のレベルで学習しているのです。
セスはさらに、この夢の中で、まだ物理的には聞いたこともないはずの「言語」の習得さえも行われていると語ります。
「胎児は、親が話すのを聞く前に、テレパシーによるコミュニケーションの中にあり、胎児の遺伝的な夢でさえ、言語のコーディングと解釈を伴います」
これは、物理的な「音」としての言語を学ぶのではありません。
夢を通じて、集合的無意識の広大な海にアクセスし、言語の持つ普遍的な意味、構造、エネルギーそのものを魂に「ダウンロード」しているのです。
そして、この世界に生まれた後、親や周囲の人々が話す特定の言語(日本語、英語など)は、すでにインストールされている普遍的な言語OSを「起動」させるための、トリガーの役割を果たすに過ぎないのです。
人間の子供が、あれほど複雑な言語を驚異的なスピードで習得できる謎は、現代の言語学や脳科学でも完全には解明されていません。
セスのこの視点は、その謎の背後に、私たちがまだ知らない、壮大な魂の準備段階が存在する可能性を示唆しているのです。
意識が肉体に先行し、夢の中でさえ人生の準備をしているというセスの視点に立つとき、私たちは、自分がいかに広大で、叡智に満ち、力強い存在であるかを思い出すことができます。
私たちの物語は、この世に生を受けるずっと前から、すでに始まっているのです。
【ユング心理学との接続】集合的無意識の海へ

この「遺伝的な夢」がアクセスする広大な意識のネットワークは、心理学者カール・グスタフ・ユングが提唱した**「集合的無意識(Collective Unconscious)」**の概念と深く結びついていると考えられます。
集合的無意識とは、個人の経験によって形成される「個人的無意識」のさらに奥深くにある、人類に共通する普遍的な無意識の層です。
ここには、世界中の神話、伝説、夢に共通して現れる**「元型(アーキタイプ)」**と呼ばれる、英雄、賢者、大母神といった根源的なイメージが眠っています。
セスの言う「遺伝的な夢」は、まさにこの集合的無意識の海から、胎児が必要な元型や象徴、言語の原型といった情報を引き出し、自らの精神を構築していくプロセスと解釈することができるでしょう。
【宇宙理論の比喩】ホログラフィックな意識の構造
さらにこの構造を、現代物理学の仮説である**「ホログラフィック宇宙論」**を比喩として用いると、より興味深い側面が見えてきます。
ホログラフィック原理とは、「三次元空間の情報は、その境界となる二次元面にすべて記録されている」という考え方で、これを宇宙全体に応用したものがホログラフィック宇宙論です。
この理論の重要な特徴は**「全体は部分に宿り、部分は全体を反映する」**という性質です。
一枚のホログラム写真をどんなに小さく分割しても、その一片一片に元の全体の像が(解像度は落ちるものの)記録されています。
これを意識の世界に当てはめてみましょう。
胎児という「部分」が、「遺伝的な夢」を通じて、人類という「全体」の言語や叡智にアクセスできるというセスの考えは、まさにこのホログラフィックな構造と酷似しています。
私たちの個々の意識は、宇宙全体の意識を内に秘めた、尊い小宇宙(ミクロコスモス)なのかもしれません。
私たちはなぜ「欠点」や「困難」を選ぶのか?
さて、私たちの旅は、最も核心的で、そして受け入れがたいかもしれない問いへと戻ってきます。
「もし自分で人生を選べるのなら、なぜわざわざ苦痛や困難、欠点を伴う人生を選ぶのだろうか?」と。
魂の尽きない好奇心と「人間のドラマ」への渇望
セスは、その第一の理由として、私たちの魂が持つ、尽きることのない好奇心を挙げます。
魂は、安全で予測可能なだけの人生には満足しません。
光と闇、喜びと悲しみ、成功と失敗といった、あらゆるコントラストに富んだ「人間のドラマ」を体験し、そのすべてを味わい尽くしたいという根源的な渇望を持っているのです。
「あなた方は、人間の経験に対する偉大な好奇心の結果として生きているのです。あなた方は、人間のドラマに参加したいがために生きているのです」
私たちが、感動的な映画や悲劇的な物語に涙するのは、そこに魂が求めるドラマの本質が映し出されているからなのかもしれません。
「欠点」が磨き出す、もう一つの才能
そして、より深い理由として、魂は特定の目的を達成するために、意図的に困難な状況を選択するとセスは語ります。
「ある人々は、他の領域により強く集中するために、意図的に『欠陥のある身体』を選ぶでしょう。彼らはそのような焦点の当て方を望むのです」
例えば、視覚的なハンディキャップを選ぶ魂は、その代わりに聴覚や直感といった他の感覚を驚異的に発達させるかもしれません。
社会的な困難を選ぶ魂は、内面的な強さや深い共感力を磨き上げ、多くの人々に影響を与える存在になるかもしれません。
この選択は、個人だけでなく、その親や社会全体にも影響を与え、「強さとは何か」「愛とは何か」「人生の価値とは何か」といった、根源的な問いを投げかけ、人類全体の精神的な成熟を促す起爆剤となるのです。
【ユング心理学の叡智】「影(シャドウ)」と向き合う勇気

この「困難を選ぶ」という魂の意図は、ユング心理学における**「影(シャドウ)」**の概念と重ね合わせることで、その深い意味が明らかになります。
「影」とは、私たちが「自分らしくない」と判断し、意識の光の当たらない暗闇へと追いやった、自己の側面(例えば、怒り、嫉妬、弱さ、攻撃性など)のことです。
多くの人は自分の「影」から目を背けて生きていますが、ユングによれば、この「影」を意識的に見つめ、自己に統合していくことこそが、魂が真の全体性を取り戻す「個性化の過程」に不可欠なのです。
魂が自ら「欠点」や「困難」を選ぶのは、まさにこの「影」と正面から向き合い、それを乗り越えることで、より大きく、より統合された自己へと成長することを意図している、と解釈することができます。
困難とは、魂が自らに課した、成長のための聖なる試練なのです。
【ストア派哲学の視点】運命を愛する「Amor Fati」の精神
この魂の選択を受け入れ、人生の全てを肯定する姿勢は、古代ギリシャ・ローマのストア派哲学が掲げた**「Amor Fati(アモール・ファティ)=運命愛」**の精神と深く共鳴します。
これは、単に運命を諦めて受け入れるという消極的な態度ではありません。
むしろ、自らの人生に起こるすべてのこと——喜びも苦しみも、成功も失敗も、出会いも別れも——その一切合切を、「これこそが私が望んだものだ。これが我が人生、これでよし」と力強く愛し、肯定する能動的な精神です。
セスの視点に立てば、「運命」とは「魂が自ら選んだシナリオ」です。
であるならば、「Amor Fati」とは、自らの魂の選択を絶対的に信頼し、人生という壮大なドラマを、その主人公として、恐れることなく、歓喜をもって生き抜く覚悟そのものと言えるでしょう。

まとめ:あなたは自らの人生の設計者
ここまで、セスが示す壮大な世界の入り口を、様々な角度から探求してきました。
- 私たちの遺伝子や肉体は、魂がその目的のために自ら選んだ青写真であり、エピジェネティクスが示すように、私たちの意識によってその働きは変わり続けます。
- 輪廻転生は、罰ではなく、魂が「個性化」を達成するための自由な学びの場です。
- 夢は、集合的無意識の海と繋がる根源的な意識活動であり、肉体に先行して存在します。
- 人生の困難や欠点でさえ、魂が自らの「影」を統合し、成長するための、意図的で創造的な選択なのです。
これらすべてが指し示すのは、**「あなたは、あなた自身の人生の設計者であり、その主人公である」**という、揺るぎない真実です。
あなたの人生のあらゆる側面は、決して偶然の産物ではなく、あなたの魂の深い叡智によって、愛をもって選ばれています。
その視点に立った時、世界は、そしてあなた自身の物語は、全く新しい輝きを放ち始めるはずです。
次の中編では、この一人ひとりの「魂の設計図」が、どのようにして家族や社会、ひいては世界の歴史といった集合的な「現実」を織り上げていくのか、さらに壮大でダイナミックなセスの世界を探求していきます。

ブログを読んで、さらに見識を深めたいと思ったら、ぜひ本書を手に取ってみてください。
本書は英語版のみとなります。