セスブック3『知られざる現実 第1巻』要約と解説(前編):写真に秘められた「確率的な自己」との対話

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 私たちの現実は、本当に私たちが「知っている」ものだけなのでしょうか?
 もし、選ばなかったもう一つの人生が、今この瞬間もどこかで続いているとしたら…?

 セスブックシリーズの中でも特に深遠とされる『知られざる現実』は、私たちが認識している世界が、無数の可能性の中から選び取られたほんの一面に過ぎないことを明らかにします。
 この前編記事では、古い一枚の写真を手がかりに、セスが解き明かす「確率的な自己(Probable Selves)」という衝撃的な概念の扉を開きます。

本記事のラジオ形式の音声版をご用意いたしました。
文章を読む時間がない時や、リラックスしながら内容を深く味わいたい時などにご活用いただければ幸いです。

目次

あなたという存在は「一人」ではない – 多次元的な自己の探求

 私たちは普段、自分という存在を「この身体を持った一人の個人」として疑うことなく生きています。

 しかし、高次元の存在であるセスは、その認識自体が、私たちが自らに課した壮大な「制限」であると語りかけます。
 本書『知られざる現実』は、その制限の枠を超え、私たちが本来持つ多次元的な自己の姿を垣間見るための、深遠な旅への招待状なのです。

 セスが本書の口述を始めた目的は、非常に明確です。
 それは、私たちが無意識のうちに囚われている「一つの神、一つの自己、一つの身体」という固定観念を根底から揺さぶり、その奥に広がる広大な現実、つまり「知られざる現実」へと私たちの意識を導くことでした 。

セスは本書の序文でこう述べています。

「人類はかつて、歴史的に言えば、世界は一つしかないと考えていた。
 今ではそれが違うと知っているが、それでもなお、一つの神、一つの自己、そしてそれを経験するための一つの身体という考えにしがみついている」

 この固い信念体系が、私たちの知覚を限定し、本来アクセス可能なはずの広大な意識の領域から自らを遮断してしまっているのです。
 セスは、私たちが当たり前だと思っているこの世界の成り立ち、自己の認識、時間の流れといった根本的な概念に疑問を投げかけ、より大きく、より自由な現実像を提示します。
 その目的は、単に知的な好奇心を満たすことではありません。
 私たちが自己の潜在能力を完全に理解し、より大きな充足感を得て生きるために、この探求は「実行可能であるだけでなく、必要不可欠」だとセスは断言するのです。

 この壮大な探求の旅は、非常に個人的で、誰もが共感できるような出来事から始まりました。
 それは、本書の記録者であるロバート・バッツが、亡き母の死を深く思い、古い写真についてセスに問いかけたことがきっかけでした。

 多くの人が「死後の世界」を想像するとき、それは現在の人生の延長線上にある、少しだけ平和になった世界を思い浮かべるかもしれません。
 しかしセスは、その問いを入り口として、私たちが生前も死後も、いかに多くの可能性の現実の間に絶妙に存在しているかを解き明かし始めます。

 具体的なセッションは、ロバートと彼の妻でありセスのチャネラーであるジェーン・ロバーツが、それぞれの子ども時代の写真をテーブルの上に置いたことから始まりました。

  • ロバートの写真:
     彼が2歳になる少し前に撮られたもの。
     白い服を着て、足元のひよこを見つめている姿が写されています。
  • ジェーンの写真:
     彼女が12歳の時に撮られたもの。
     カトリックの孤児院で過ごした後に撮影され、その表情には年齢にそぐわない複雑な感情が宿っています。

 これらの写真は、単なる過去の記録ではありません。
 セスによれば、それは無数の可能性の中から一つの現実として結晶化した「スナップショット」です。

 この写真に写る幼いジェーンとロバートは、今ここにいる二人へと繋がる一本道を歩んできたのでしょうか?
 それとも、この写真の瞬間から、全く別の人生を歩み始めた「もう一人の自分」が存在するのでしょうか?

 この問いこそが、『知られざる現実』の核心に触れる鍵となります。
 セスは、これらの写真を通して、ジェーンとロバートがどのような背景を選び、どのような確率的な道を歩んできたのかを、驚くべき精度で解き明かしていくのです。

選ばれなかった現実のイメージ

 本書で最も重要かつ衝撃的な概念が、この「確率的な自己(Probable Selves)」です。
 これは、私たちの性格の象徴的な一部分や、単なる比喩ではありません。

 セスは明確に、確率的な自己は「それ自体がエネルギーの実体」であり、私たちがこの人生で選択しなかった道を実際に歩んでいる、もう一人の自分であると述べています。

 考えてみてください。
 あなたは人生の岐路で、Aという道を選びました。
 しかし、Bという道を選ぶ可能性も確かに存在しました。
 私たちの常識では、Bの可能性は選ばれなかった瞬間に消滅したと考えます。
 しかし、セスの視点ではそうではありません。
 Bの道を選んだ「あなた」は、別の確率的な現実において、その人生を厳然と生き続けているのです。

セスはこのように説明します。

「あなたの精神(Psyche)は、それ自体がエネルギーの集合体と考えることができます。そのエネルギーは、あなたには知られていない法則や特性に従っています。…(中略)…ある決断の核となるエネルギーがあまりに強い場合、その強さに応じて、特定のアイデンティティが利用できる全体性の中から、ある塊を引き寄せます」

つまり、私たちの内なるエネルギーが十分に強ければ、一つの人格だけでは表現しきれない可能性が、文字通り別の自己として「分岐」し、独自の現実を生き始めるのです。
 それは、花が花びらを広げるように、ごく自然な創造のプロセスなのです。

 あなたには、芸術家になる道も、科学者になる道も、スポーツ選手になる道もあったかもしれません。
 あなたが選んだ現実では、他の可能性は潜在的な才能として存在するかもしれませんが、別の確率的現実では、その才能を存分に開花させた「あなた」が、今この瞬間も存在しているのです。

人生の選択が「確率」を生み出す – あなたの知らない、もう一つの物語

「確率的な自己」という概念は、単なるSF的な空想ではありません。
 セスによれば、それは私たちの現在の人生、性格、無意識の傾向、そして人間関係にまで、深く、そして密接に関わっています。
 ジェーンとロバートの個人的な写真の分析を通して、その具体的な相互作用を見ていきましょう。

 セスは、12歳のジェーンの写真を指し、彼女がこの現実で歩んだ道とは異なる、もう一つの可能性について語ります。
 この現実のジェーンは、成長するにつれて神秘的な体験を詩や芸術の世界で表現する道を選びました。
 しかし、別の確率的現実では、彼女は全く違う選択をしました。

この分岐点は、彼女が10代の頃に書いた詩を神父に見せた、ある面談の日に起こりました。

  • この現実では:
     神父は、彼女の神秘主義が教会の組織には収まらないことを見抜き、母親のために家にいるよう諭しました。
  • もう一つの現実では:
     神父は彼女の願いを受け入れ、彼女は修道女となる道を選びました。
     そこでは、彼女の神秘的な性質は、教会の枠組みの中で、より直接的に、そして継続的に表現されることになったのです。

 これは、人生のたった一つの選択が、いかに大きく異なる現実を創造するかを示す、非常にパワフルな例です。

 あなたがあの時、「はい」ではなく「いいえ」と答えていたら?
 あの電車に乗らず、一本後の電車に乗っていたら?
 その全ての「もしも」が、別の確率的現実として存在し、もう一人のあなたがその人生を体験しているのです。

 驚くべきことに、これらの確率的な現実は、完全に孤立しているわけではありません。セスによれば、全ての確率的な自己は、無意識のレベルで情報の流れや経験を共有しており、互いに影響を与え合っています。

 では、その影響は具体的にどのような形で、私たちの「今」に現れるのでしょうか?

根源的な繋がり:「全体としての自己」という視点

多次元世界の夢

 まず理解すべきなのは、なぜ影響を与え合うことが可能なのか、そのメカニズムです。
 セスによれば、あなたという存在、そして全ての確率的な自己は、より大きな「エンティティ(存在全体)」から派生した側面だからです。

 これを一本の巨大な樹に例えることができます。

  • 幹と根: あなたの「エンティティ(存在全体)」
  • 無数の枝: あなたと、あなたの全ての「確率的な自己」

 それぞれの枝は異なる方向に伸び、異なる葉をつけ、異なる風景を見ています。
 しかし、全ての枝は同じ一つの幹と根から養分を受け取り、繋がっているのです。この根源的な繋がりがあるからこそ、枝と枝の間で、目には見えないエネルギーや情報の交流が絶えず行われています。

 私たちは普段、自分の枝しか認識していませんが、無意識の深いレベルでは、他の枝(確率的な自己)の経験…その喜び、悲しみ、学び、そして培った才能を、常に感じ取っているのです。

現在のあなたに現れる「確率的な自己」からのサイン

この無意識の交流は、私たちの日常生活の中に、様々な「サイン」として現れます。

1. 性格や感情のパターン
 先に触れたジェーンの例は、この典型です。
 修道女になった確率的な自己が持つ「神秘主義は規律の中で管理されなければならない」という経験が、この現実の彼女に「人々を迷わせてしまうのではないか」という慎重さや恐れとして、無意識のうちに影響を与えていました 。

これを私たちの人生に当てはめてみましょう。

  • 理由のわからない恐怖症や苦手意識:
     なぜか高いところが怖い、閉所が苦手だ、特定の動物がどうしても受け入れられない…こうした感情は、別の確率的現実でその対象に関連するトラウマ的な経験をした自己からの「響き」かもしれません。
  • 説明のつかない強いこだわり:
     特定の価値観や信条に対する、頑なとも言えるこだわり。
     それは、その価値観が非常に重要であった別の人生を生きる自己からの影響である可能性があります。

2. 才能やスキルの発露
 あなたが特に練習したわけでもないのに、なぜか人よりもうまくできてしまうことはありませんか?
 あるいは、学び始めると驚くほどのスピードで吸収できる分野はありませんか?
 セスは、これも確率的な自己からの影響である可能性を示唆しています。

「ある確率的な自己は、18歳であなたの現実から分岐したかもしれませんが、40歳になって様々な理由で再びあなたと交差することがあります。
 その結果、あなたは突然、ある職業を変えたり、忘れていたと思っていた才能に気づき、驚くべき速さでそれを伸ばし始めたりするのです」

 あなたがこの人生で追い求めなかった芸術や音楽、語学、あるいは特定の専門知識。
 それらを追求し、その道を極めている確率的な自己が存在するかもしれません。
 その自己からのエネルギーが流れ込む時、あなたはまるで「眠っていた才能が目覚めた」かのように、その能力を発揮することができるのです。

3. 人間関係における強烈な共鳴
 さらに衝撃的なのは、ロバートの両親に関するセスの分析です。
 セスは、ロバートの両親が「そもそも同じ現実を共有していなかった」と述べます 。

「彼らはそれぞれの現実の間の場所で出会い、関係を持っていました。彼らが出来事の解釈に同意しなかったということではありません。出来事そのものが異なっていたのです」

 セスによると、ロバートの父親は、別の確率的現実では、結婚せずに機械への情熱を追求する有名な発明家でした。
 私たちが知る「父親」は、その発明家としての自己が避けた「感情的な現実」と向き合うために生まれた、確率的な自己だったのです。
 同様に、彼の母親も、別の確率的現実では医師と結婚して看護師として自立した人生を送っており、そのエネルギーの一部がこの現実に流れ込んでいた、とセスは説明します。

 これは、私たちの最も身近な人間関係でさえ、私たちが認識している以上に複雑で、多次元的な繋がりによって成り立っていることを示しています。

  • 初対面での強烈な親近感やデジャヴ:
     まるで昔からの知り合いのように感じたり、理由なく強く惹かれたりする相手は、別の確率的現実であなたと深い親子、夫婦、親友であった自己の片割れかもしれません。
     その時の繋がりが、この現実での出会いに強烈な共鳴を引き起こしているのです。
  • 運命的な出会いと学び:
     どうしても関わらなければならない、たとえ困難な関係であってもそこから大きな学びを得るような相手。
     それは、互いの確率的な自己が、この現実で特定のテーマを学び合うことを約束してきた「魂のパートナー」である可能性もあります。

 セスは、選択によって人生が「分岐」し、異なるタイムラインが生まれるというイメージで語ることが多いですが、バシャールはよりラディカルな視点を提示します。

 バシャールによれば、
  過去も未来もなく、無数の並行現実はすべて「今、ここ」に同時に存在しているといいます。

「私たちが体験する「時間」の流れや、「変化」「動き」といった感覚は、私たちの意識が毎秒何十億回という驚異的なスピードで、異なる並行現実(静止した現実のコマのようなもの)を通過し、シフトすることによって創り出されている幻想に過ぎません」

 この視点に立つと、私たちは世界そのものを変えるのではなく、自分自身の「あり方」、つまり観念や意識の周波数を変えることで、その変化した自分にふさわしい別の並行現実へと「今、この瞬間」にシフトしていることになります。

  • セスの視点:
     人生は、選択によって枝分かれしていく「確率の樹」のよう。私たちはその一本の枝を旅しているが、他の枝も同時に存在している。
  • バシャールの視点:
     人生は、無数のチャンネルを持つ「テレビ」のよう。
     私たちは意識というリモコンで、見たい現実(チャンネル)を「今、ここ」で常に選択している。

 どちらの比喩も、私たちが体験している現実は唯一絶対のものではない、という点で共通しています。
 セスの「確率的な自己との無意識の交流」は、バシャールの言う「異なる並行現実(チャンネル)からの情報の漏れ」と捉えることもできるでしょう。

 重要なのは、私たちが思っている以上に、私たちの現実は流動的で、変化の可能性に満ちているという事実です。

「知られざる現実」を知る意味とは?

 では、このような壮大で、ともすれば混乱を招きかねない概念を知ることに、どのような意味があるのでしょうか。
 それは、私たちの可能性を根底から解き放ち、より意識的な現実の創造主となるための、不可欠なステップだからです。

 私たちが「自分はこういう人間だ」と思い込んでいる自己像は、実は広大な自己のほんの一部分にすぎません。
 セスはこのように述べています。

「あなたが自己の本質について非常に制限された概念を持っている限り、多次元的な神性や、すべての意識が唯一無二で不可侵であり、しかも無限の組織化と意味のゲシュタルトの形成に関与している普遍的な現実を想像し始めることはできません」

「確率的な自己」の存在を知ることは、私たちが「なれたかもしれない自分」の能力や資質が、決して失われたわけではないことを意味します。
 それらは、あなたという存在の広大な「可能性の銀行」に、今も預けられているのです。
 この事実に気づくことで、私たちは現在の人生において、これまで不可能だと思っていた才能や能力を「引き出し」、活用することができるようになります。

 あなたが諦めてしまった夢、心の奥にしまい込んだ情熱…それらを生きている「もう一人のあなた」と無意識のレベルで繋がることによって、そのエネルギーとインスピレーションを現在の自分にもたらすことができるのです。
 これは、自己の限界を取り払い、人生をより豊かに、より創造的に生きるための、最もパワフルな鍵となります。

 これほどダイナミックな現実が背後で繰り広げられているにもかかわらず、なぜ私たちはそれに気づかないのでしょうか。その理由は、私たちの意識が持つ「セレクティビティ(選択性)」という、極めて強力かつ巧妙な性質にあります。
 セスによれば、私たちの意識は、無限に広がる活動の場から、自分にとって**「意味がある(significant)」**と判断した出来事だけを選び出し、それらを繋ぎ合わせることで、一貫性のある「公式の現実」を創り上げています。

「あなたの意識は、全体的な目的、決断、意図の中から、特定のものの結果と派生だけを現実として受け入れるように選び取ります。あなた方はこれらの出来事を、正当な経験が意識化されることを可能にする時間構造を通して追跡します」

 まるで、ラジオのチューナーが特定の周波数だけを拾って音楽として再生するように、私たちの意識も特定の「確率の周波数」にチャンネルを合わせているのです。
 そして、それ以外の無数のチャンネルは、ノイズとして処理されるか、あるいは全く認識されることすらありません。
 この「選択性」は、私たちが物理次元で行動するために必要な集中力と安定性を与えてくれる、生存に不可欠な機能です。

 しかし、この性質をさらに深く理解するためには、いくつかの側面から光を当てる必要があります。

1. 選択のフィルター:「信念体系」が創り出す現実

では、意識は何を基準に、無数の情報の中から特定の出来事を「意味がある」と判断するのでしょうか?

 その答えは、バシャールもよく話している私たちが心の奥深くで抱いている「信念体系(ビリーフシステム)」、つまり「観念」にあります。
 あなたが「世界とはこういうものだ」「自分とはこういう人間だ」「可能なことと不可能なことの境界線はここにある」と固く信じていること、その信念こそが、選択性というフィルターの設計図なのです。

 あなたの意識は、あなたが真実だと信じていることと矛盾しない情報だけを現実として認識しようとします。
 例えば、「人生は苦しいものだ」という強い信念があれば、あなたの意識は日常の中から苦しみや困難の証拠となる出来事を巧みに選び出し、それらを繋ぎ合わせて「ほら、やっぱり人生は苦しい」という一貫した物語を創り上げます。

 その裏で起こっているかもしれない喜びや奇跡の出来事は、「例外」や「偶然」として処理され、公式の現実からは除外されてしまうのです。

2. 生存と成長のための「意識の特化」

 この強力な選択性のメカニズムは、決して私たちを制限するためだけに存在するわけではありません。
 セスによれば、これは人類がその意識を発達させる過程で、戦略的に採用した「特化」の結果なのです。

「歴史的な観点から人類が記憶を意識し、過去を過去として認識し始めた時、過去と現在を混同する可能性がありました。…(中略)…過去の鮮やかな記憶が、現在の瞬間に必要な鮮明な焦点と競合する可能性があったのです」

 セスは、初期の人類が物理世界で生き残り、道具を使い、環境を操作する方法を学ぶためには、意識を「今、この瞬間」の物理的現実に鋭く集中させる必要があったと説明します。
 目の前の獲物や敵に即座に対応するためには、他の確率的現実からの情報や、過去・未来からの鮮明なビジョンは、むしろ邪魔になる可能性さえありました。

 そのために、私たちの祖先は、無数の神経パルス(情報)の中から、物理的行動に直結するものだけを「公式データ」として採用し、それ以外の情報を「生物学的に見えなくする」ように、自らの神経系をチューニングしていったのです。

 これは、一つの能力を極めるために他の可能性を一時的に脇に置くアスリートや芸術家にも似ています。
 人類は、「物理次元をマスターする」という壮大なプロジェクトのために、多次元的な知覚能力を、あえて無意識の領域へとしまい込んだのです。
 
 この「忘却」と「集中」こそが、私たちが今日知る文明を築くための土台となりました。

3. フィルターの向こう側を垣間見る方法

 では、私たちは永遠にこの「公式の現実」に閉じ込められているのでしょうか?

 答えは「いいえ」です。

 このフィルターは絶対的な壁ではなく、意識の向け方次第で、その向こう側を垣間見ることが可能です。
 
 セスは、そのためのヒントをいくつか示しています。

  • 「意味のある偶然(シンクロニシティ)」に気づく
      あなたが「これは単なる偶然だろう」と片付けてしまう出来事の中に、実は別の確率的現実からのメッセージが隠されていることがあります。
     セッション693で語られた、ロバートが偶然見つけた家が、実は彼の母親の確率的な人生と深く関わっていたエピソードは、その典型です。
     「あなたの個人的な生活の中には、出来事が起こりうる他の種類の順序への手がかりがあります。…(中略)…しかし、それらがあなたが慣れ親しんだ秩序ある順序に適合しないため、あなたは通常、それらの重要性に気づきません」 こうした「偶然の一致」の連鎖に注意を向け、その背後にある意味を探求し始めるとき、あなたは「公式の現実」の裏に流れる、別の秩序の存在に気づき始めるでしょう。
  • 夢の世界を探求する
     私たちが眠っている間、物理的生存への集中を必要としないため、この選択性のフィルターは大きく緩みます。
     夢の中は、確率的な自己と出会ったり、選ばなかった人生の断片を体験したり、あるいは未来の可能性を予行演習したりするための、絶好の舞台となるのです。
     セスは、夢が決して無意味な情報の寄せ集めではなく、現実を創造するための「青写真」が作られる、極めて重要な活動の場であると強調します。

 私たちが他の確率的な自分に気づけないのは、自分自身が設定した「これが現実だ」という信念のフィルターを通して世界を体験しているからです。
 しかし、そのフィルターの存在を自覚し、その色や形(つまり、自分の信念)を意識的に探求し始めるならば、話は変わってきます。
 あなたは、フィルターが作り出す制限された「公式の現実」の主であると同時に、そのフィルターを調整し、より広大で豊かな「知られざる現実」の光を人生に取り入れることができる、意識的な創造主でもあるのです。

 この「選択性」は、私たちが物理次元で行動するために必要な集中力と安定性を与えてくれる、重要な機能です。
 
 しかし、その焦点が過度に固定的になると、私たちは自らが創り上げた「公式の現実」だけが唯一の真実であると信じ込み、その外に広がる広大な「知られざる現実」の存在を忘れてしまうのです。

まとめ

 今回は、セスブック『知られざる現実』の世界への第一歩として、本書の核心的な概念である「確率的な自己」について探求しました。

  • 私たちの自己は、一つの身体、一つの人生に限定されない多次元的な存在である。
  • 人生におけるあらゆる選択は、異なる「確率的現実」を生み出し、そこでは「もう一人のあなた」がその人生を生きている。
  • これらの確率的な自己とは無意識のレベルで交流があり、現在の私たちの人生にも影響を与えている。
  • この壮大な現実像を理解することは、自己の制限を取り払い、無限の可能性を解き放つ鍵となる。

 一枚の写真から始まったこの旅は、私たちに「自分とは何か?」という根源的な問いを突きつけます。
 あなたが今、体験している現実は、無数の可能性の中から、あなた自身が選び取った、尊い一つの物語なのです。

 しかし、この物語の背後には、さらに深い宇宙の法則が隠されています。
 すべての現実を創造している根源的なエネルギーとは何か?
 私たちが体験している「時間」の本当の姿とは?

 中編では、セスの教えのさらに奥深くへと分け入り、物質世界のヴェールの向こう側にある、意識と時間の驚くべき秘密を解き明かしていきます。

ブログを読んで、さらに見識を深めたいと思ったら、ぜひ本書を手に取ってみてください。
本書は英語版のみとなります。

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